初デート
初めておろすスカートとブラウス。緊張しながら彼の家で待ち合わせ、そこから二人で向かった、初めてのデートらしいデート。電子チケットを事前購入していたため、並ぶことなくスムーズに入場出来た。手元に紙で残らないのは少し残念かも_なんて少し思うけど。
学生の夏休みが始まる前だからか、思っていたより混んではいなかった。イルカに始まり、全部のコーナーをひとつずつ見て回る。ガラス越しに映る彼の眼が綺麗だった。
気付けばイルカショーの時間になり、暑い暑いと言いながら外の観覧席に腰をかけた。彼がアイスを買ってきてくれて、ショーを見ながら二人で食べた。バニラが甘くて、これまで食べたどのアイスより美味しかった。
昼は一度店内を出て、近くにある洋食屋へ。水族館内でも外でも、飲食施設が豊富だから、昼時でも並ばず食事が出来るのは嬉しい。再入場するためには、手の甲にブラックライトのスタンプを押す必要があって、光に反応する刻印というのは幼心がくすぐられて楽しかった。
オムライスをお腹いっぱいに食べて満足したところで、スタッフさんへライトを見せて、水族館へ再入場。シャチの公開トレーニングやマイワシのトルネードといったメインイベントもしっかりとみて、遊び疲れた最後、私が一番楽しみにしていたクラゲのブースについた。
クラゲブースは、そこだけで一つの展示室のようになっていて、真っ暗な室内で光にあたったクラゲたちが不規則に揺れていた。綺麗。思わず漏れていたらしい。隣の彼が「ですね」と相槌を返す。
本当に綺麗だった。光に揺れるクラゲたちは、舞うというのが正確な気がする。何を考えているのだろう。仕事、恋愛、家族、将来的なキャリアにお金の心配、そういう日常の不安やストレス、悩みが、クラゲの揺れにあわせて、少しずつ泡となって消えていく。
「ねえ」隣にいる彼に声をかける。
「どうしました?」
「帰り、アイス買って帰ろう」
彼はにこりと微笑み、私の左手を握った。